■個人の権利と市場の権利のバランス
Cardanoは「個人の権利」と「市場の権利」のバランスをとるとの立場に至りました。
【個人の権利】政府金融機関企業が腐敗した発展途上国でも機能させるため、個人の許可なしには政府等が強制的に資産を没収することはできません。この「個人の権利」は徹底的に守られます。
【市場の権利】一方で、市場も個人に取引条件を要求することができるようにしました。個人がこれにOKした場合、個人はその市場のルールに従う必要があります。
例えば、日本のDEX(分散取引所)にADAを預けるとします。この時、分散取引所は「市場の権利」として
・このADAに正確な身分データが伴っており、反社会リストのデータに該当したり未成年のデータの場合、強制返金処理が可能なこと
・特定期間の利益が自動的に税金として日本へ支払われること、あるいは、日本へ適切に納税が行われていない場合、日本規制当局のみが持っている秘密鍵を使用することでADAを強制差押処理することが可能になること
を個人に要求でき、それをOKして分散取引所に参加した場合、この市場のルールに従うこととなります。
ビットコインでは中間搾取の排除のため、身分データを放棄してしまったため、市場が扱いづらくなってしまいました。また、国家に強制差押権を与えるという通貨もありますが、これは腐敗した国での利用にも耐えるというADAのビジョンとは合いません。したがって上記のようなバランス型で進めることとしました。
■分散型評判システム
最も難しい問題が、「メタデータが正しいことをどうやって、プライバシーを保護しながら確認するか?」です。
田中さんがどうやって本当に田中さんであることを、分散性を守りながら確認するのか、これには絶対的に正確な方法はなく、まぁベター、という方法しかありません。
これに関する1つの構想が、分散型評判システムです。
ADAを使った投票等により、この人だったら信頼できる、という評判を付与していきます。最初はIOHKやEmurgoが評判リストに入りますが、これも徐々に分散化されていきます。
この評判リストで特に評判の高いアカウントによって、田中さんというCardano上のアカウントから田中さんの運転免許証やパスポートが一緒に送られ、身分データの認証が行われます。
この運転免許証やパスポートのデータはHSM等の技術により認証後強制的に削除され、できる限りプライバシーは守られます。
さらに、この分散型評判システムを前提として、Ari Juel教授のTown Crierプロトコルより、スマートコントラクトや他のアプリケーションで使用できる安全なウェブスクレイピングをも可能にします。